
日本には、ビジネス文書などを紙で保存することを義務付けた法律が数多くあります。
人材派遣ビジネスにおける労働者派遣契約も例外ではなく、派遣先との契約は長年、書面のみが認められてきました。
紙は保存や管理がしにくいなど、デメリットも多いでしょう。
このデメリットを解消するために、国を挙げてあらゆる面でのIT化を加速してきました。
そして2021年1月に、ついに労働者派遣契約の電子化が認められるようになったのです。
ところで人材派遣業のみなさんは、契約の電子化に対応もしくは導入を検討していますか。
今回は人材派遣業における電子化についてご説明するとともに、対応に必要なものやメリットなどをご紹介します。
これから契約の電子化を検討している人材派遣業の人は、参考にしてみてください。
目次
労働者派遣契約の電子化
人材派遣会社と派遣先企業の間では、労働者派遣(個別)契約を締結しなければなりません。
人材派遣業界においては、これまで労働条件通知書などさまざまな文書の電子化が認められてきましたが、労働者派遣(個別)契約は依然として書面に記載することが義務付けられていました。
ところが、法改正により2021年1月より労働者派遣(個別)契約においても電子契約が認められるようになりました。
電子契約とは、紙に押印して取り交わす契約に代わり、電子データに電子署名をすることで取り交わす契約のことです。
この法改正を機に、人材派遣ビジネスにおいても電子化の恩恵を受けられることが期待できます。
人材派遣業で契約の電子化に対応するメリット
人材派遣業で契約を電子化することで、さまざまな利点があります。
ここでは、主な4つのメリットをご紹介します。
コスト削減
人材派遣業の契約を電子化することで、コストの削減に繋がります。
書面で契約を取り交わすためには、さまざまな費用がかかっています。
以下はその一例です。
- 用紙代
- インクやトナーなどの印刷代
- 従量課金制の印刷機のランニングコスト
- 書類の郵送代・人材派遣先に持参する場合は交通費など、人やモノの移動費
この他にも、書類の保管スペースの場所代などもかかるでしょう。
一方で電子化に対応すれば、これらの費用を抑えることができます。
また、印刷をしなければペーパーレス化を加速させることができ、環境にも優しい企業運営を実現できるのではないでしょうか。
工数削減
人材派遣業の契約書を紙で交わす際、多くのプロセスが必要です。
また短期の派遣契約の場合は、契約書の更新が頻繁に発生し、その度に書類を作成しなければなりません。
電子化すれば、工数を削減することができ、業務のスピードを大幅にアップすることが期待できます。
以下は、紙の契約書を取り交わす際の主な流れです。
- 契約書の作成
- 印刷
- 自社で押印
- 封入
- 郵送あるいは持参
- 人材派遣先で押印
- 返送
- 契約書の保管
紙の場合、契約書を取り交わすのに数日かかることも多いのではないでしょうか。
電子化をすれば、印刷の必要はありません。
業務の工程も電子化することで、書類を握りしめながらオフィス内で上司が戻るのを待つ、いわゆる「ハンコ待ち」もなくすことができるでしょう。
また、郵送や持参の代わりに人材派遣先とメールでやり取りをするため、ワンクリックで契約書を送受信することができるようになります。
管理がしやすい
紙の契約書の場合、契約書1枚1枚をルールに則ってファイリングし、指定された保管場所まで運ばなければなりません。
また、過去の人材派遣内容を契約書で確認したい場合、膨大な書類の中から該当する書類を見つけ出す手間もかかります。
電子化すれば、契約書はクラウド上に保存されるため、自分でファイリングをする手間や、保存ルールを確認しながら保管する手間も軽減されるでしょう。
また、電子化することで情報へのアクセスが格段にしやすくなります。
電子契約システムの中には検索機能が充実しいているものもあるため、膨大な書類の中から必要な書類を簡単かつスピーディーに検索することが可能です。
さらに、顧客管理システムや売上管理システムなど他のシステムと連携できるツールもあります。
このようなツールを使用することで、人材派遣ビジネスにおける多くの業務を一元管理できるでしょう。
ところで、「BCP」という言葉をご存知ですか。
BCPとは、「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉で「事業継続計画」を意味します。
企業が自然災害などの緊急事態に置かれた場合でも、損害を最小限に止めて重要な業務を継続するための計画や対策のことです。
新型コロナウイルスの流行を機に、BCPが改めて注目されています。
例えば、大地震や火事に見舞われてオフィスに被害があった場合、多くの紙の書類を失ってしまうリスクが考えられるでしょう。
電子化された書類はクラウド上に保存されるため、紛失のリスクを軽減することが可能です。
テレワーク・在宅勤務に対応できる
コロナ禍で在宅勤務をはじめとするテレワークは一気に拡大しました。
人材派遣業に携わっている人の中にも、テレワークをしている人は少なくないのではでしょうか。
契約の電子化は、テレワークにも有効です。
電子化をすれば、パソコンなどのデバイスとインターネット環境があれば、いつでもどこでも情報にアクセスすることができます。
紙の契約書には押印が必要なため、上司のハンコをもらいにいくためだけに出社する「ハンコ出社」をしなければならないこともあるかもしれません。
一方で、電子化すればハンコ出社の必要はなくなります。
また、電子契約書はメールで送受信ができるため、人材派遣先の担当者がテレワーク中でオフィスにいない場合でも、素早く対応してもらうことが可能です。
採用力の強化
テレワークが浸透しつつある現在、求職者が勤め先を決めるにあたって、テレワークが可能であることを求める傾向も強まっています。
契約の電子化に対応していればテレワークが可能で、求職者にアピールすることができるでしょう。
特に人材業はブラック企業や過酷な労働環境というイメージが強く、働きやすさをアピールすることで企業イメージを競合と差別化させてより高めることもできるでしょう。
また、テレワークに限らず、ITツールやクラウドを積極的に用いる姿勢は、古いしきたりや意味のないルールにこだわらず、時代に合わせて柔軟に変化できる企業であると、求職者から好ましく思ってもらえやすいでしょう。
契約の電子化に必要なもの
人材派遣業における契約の電子化の利点についてご紹介してきました。
ところで、人材派遣業で契約を電子化するためには、どのようなものが必要なのでしょうか。
ここでは、電子化に対応するために必要な主な3つのものをご紹介します。
社内ルールとその周知
社内で新しいことをはじめようとすると、反対する社員も少なからずいるのではないでしょうか。
特に現行のやり方に慣れている人は、変化に抵抗を感じるかもしれません。
人材派遣にかかわる契約を電子化する前に、まずは社員に利点を丁寧に説明しましょう。
より多くの社員が納得したうえで導入すると、その後の運営がスムーズになります。
また、電子化の導入にあたり、社内ルールを定めることが必要です。
例えば、電子署名権限を持つ役職の決定、承認プロセス、承認基準のルールなどが必要でしょう。
また、これまでの紙の文書の管理規定だけではなく、電子文書の管理規定を新たに設ける必要も生じてきます。
例えば、電子文書の保存先や保存された文書へのアクセス権などの規定が必要です。
そして、契約の電子化のための新たな社内ルールを作成したら、社内に徹底的に周知しましょう。
なお、紙の文書には、書面での契約締結についての文言が入っているケースもあります。
電子化にあわせて、契約書の文面のチェックもするとよいでしょう。
電子署名システム
電子化には多くのメリットがありますが、文書の偽造や改ざん、情報漏洩のリスクなども考えられます。
後々のトラブルを回避するためにも、人材派遣の契約を電子化する際は、適切な電子署名システムを導入しましょう。
電子署名システムとは、契約の締結を電子化するためのシステムです。
これまでご紹介してきたように、紙に代わりに電子契約書を作成し、電子押印や電子署名をすることができます。
さらに、電子契約にあたっては電子署名のほかに「タイムスタンプ」が必要になります。
「タイムスタンプ」とは、文書作成時刻の信頼性を担保する技術的な仕組みです。
このタイムスタンプにより、電子化された契約書の契約日時と内容を客観的に証明することができます。
電子契約は、電子署名とタイムスタンプの両方を付与することで、書面と同等の法的効力を持たせることができるのです。
つまり、電子契約にタイムスタンプがなければ法的な効力は発揮できません。
多くの電子署名システムでは、タイムスタンプ機能を有しています。
また、タイムスタンプ機能以外にも、電子化された文書が偽造・改ざんされないための対策がとっているツールが多いです。
例えば、データの暗号化や複数の認証方式を採用するなど、システムによってセキュリティ強化のためのさまざまな工夫が施されています。
人材派遣管理システム
「人材派遣管理システム」とは、人材派遣業の業務を効率的におこなえるITツールです。
派遣スタッフの仕事の振り分け、個人情報やスキル、シフトや勤怠管理などさまざまな情報を一元管理することができます。
人材派遣管理システムの中には、派遣前にスタッフと募集業務のマッチングをおこなえたり、就業後は給与計算やフォローの記録など、人材派遣の入口から出口までを管理できるツールもあります。
先にご紹介した「電子署名システム」と組み合わせることで、人材派遣ビジネスの多くの業務を電子化することができます。
契約の電子化におすすめのシステム例
人材派遣ビジネスで契約を電子化するために必要なものをご紹介してきましたが、電子化にあたり、具体的にどのようなシステムがあるのでしょうか。
ここでは、契約の電子化におすすめの3つのシステムをご紹介します。
STAFF EXPRESS(スタッフエクスプレス)
「STAFF EXPRESS(スタッフエクスプレス)」は、人材派遣ビジネスのすべての業務を一括管理できるシステムです。
人材派遣をはじめとする人材ビジネスに特化しているため、人材派遣業ならではの業務にも手が届く作りになっています。
契約の電子化はもちろん、そのほかの紙、FAX、Excel、自社サーバなどで管理していたあらゆる情報を、クラウド上に一本化することが可能です。
また、「STAFF EXPRESS(スタッフエクスプレス)」は、派遣スタッフの新規応募システム「STAFF EXPRESS ENTRY(スタッフエクスプレスエントリー)」や派遣先向け業務クラウドサービス「STAFF EXPRESS PARTNER(スタッフエクスプレスパートナー)」をはじめ、姉妹システムなどと連携できる強みがあります。
そのため、人材派遣業におけるすべてのプロセスの業務をワンストップで管理することが可能です。
これまでに500社以上の法人、3,000ヶ所以上の事業所、8,000ライセンス以上のデバイスでの実績があります。
また、利用者もスタートアップ企業から大企業までと幅広いです。
システムの利用方法は、「ソフトウェア購入プラン」と「月額支払いをするサブスクリプションプラン」の2つがあります。
初期費用の有無やランニングコストなどを比較しながら、利用方法を選択できるのも魅力でしょう。
クラウドサイン
「クラウドサイン」は、多くの国内弁護士が利用しているポータルサイト「弁護士ドットコム」を運営する企業の電子署名サービスです。
日本の法律について深い理解と知見を持ち、弁護士監修のもとで運営されているため安心して利用できるのではないでしょうか。
また、インターフェイスがシンプルで直感的に操作できるため、ITツールに対して抵抗がある人でも簡単に使いこなせるでしょう。
既に10万社以上が利用していて、さまざまな業界で国内の名立たる企業への導入実績もたくさんあります。
DocuSign
「DocuSign」は、世界中で50万社、2億人が使用しているアメリカ発の電子署名システムです。
対応言語は43か国語にも及んでおり、世界中のトップクラスの企業で活用されています。
GoogleやMicrosoft、Salesforceなど数多くの外部アプリケーションと連携可能です。
そのため、既存システムから必要なデータをDocuSignに取り込んだり、他システムに必要な情報を自動送信するなどの処理もおこなえるでしょう。
このように、外部アプリケーションと繋ぐことで業務プロセスの全てを自動化することも可能です。
また、DocuSignは電子契約におけるAI機能に力を入れています。
2020年には契約分析技術をもつ企業の買収を発表しています。
現在AIが文書から隠れた機会やリスクを特定する機能がありますが、今後AIの活用がますます進んでいくことが期待できるのではないでしょうか。
人材派遣の契約電子化に対応しよう
人材派遣ビジネスにおける契約の電子化をご説明するとともに、電子化に対応するために必要なもの、メリットについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の法改正により、紙の契約書のデメリットから開放されることになり、人材派遣業にとっては大きなメリットを享受できることになるのではないでしょうか。
この法改正を機に、労働派遣契約の電子化を採用してみましょう。